mamiwaです。
今回は、環境測定の中でも水質調査の項目として有名な”SS(浮遊物質量)”を解説します。
測定方法と、原理を理解して、実験してみましょう。
前回は、COD(化学的酸素要求量)について解説しましたので、興味のある方はこちらもぜひ読んでみてくださいね。
SSとは
SSは、Suspended Solidsの頭文字をとり、日本語では「浮遊物質量」と呼ばれています。水中の浮遊物質の量を測定することで、どの程度汚れているのかを判定します。
浮遊物質は、水の濁りの原因になるもので、コロイド状の小さなものや目に見える程度の粒子まで、さまざまなサイズの物質を総称します。
試料を孔径1㎛のガラス繊維ろ紙で吸引ろ過し、測定前後のろ紙の重量を測定することで、1リットルの試料中にどれだけ浮遊物質が含まれているか換算したの数値がSSです。
測定方法は、ガラスろ紙を用いるタイプと、メンブレンフィルターを用いるタイプの2種類があります。今回紹介するのは、ガラス繊維ろ紙を用いるタイプです。
河川や湖沼の浮遊物質をイメージすると、藻や落ち葉、プラスチックなどが挙げられると思いますが、それらはSSでは測定の対象から外します。細かいルールに、網目2mmのふるいを通過しなかったものは、粗大物として除外することになっています。
SSは、主に水質項目で、環境測定の指標として使われることがあります。
環境基本法の「水質汚濁にかかる環境基準」は、「人の健康保護」に関するものと、「生活環境の保全」に関する環境基準の2つに分けられています。
SSは、「生活環境の保全」に関する環境基準の中でも「河川」と「湖沼」の環境基準の項目となっていて、河川や湖沼のタイプによって、基準値が設定されています。
SSの値が大きいほど、汚れていると評価します。
参考文献→環境省HPより 水質汚濁にかかる環境基準
原理
先に測定方法を知りたい方は、スキップしてくださいね。
タイトル詐欺をしてしまい申し訳ないのですが、SSは重量比較する測定方法なので、ぶっちゃけ化学らしいことはないです。原理なんて図々しくいうこともないんですけどね。
水中の浮遊しているものの量を測定したければ、水を抜けば良いという原理です。
測定方法
必要なもの(試料、試薬、道具)
〈試料〉
・測定したい試料(液体)
・純水(イオン交換水)
〈道具〉
・孔径1㎛のガラス繊維ろ紙
・網目2㎜のふるい
・乾燥機
・デシケーター
・電子天秤
・メスシリンダー1000mL
・アスピレーター(吸引器)
測定手順
〈実験の2~3時間前に準備しておく操作〉
①孔径1㎛のガラス繊維ろ紙を、ろ過器に取り付け、水で十分に吸引洗浄する。
②このろ過材を105〜110℃の乾燥器中で2時間乾燥し、デシケーター中で放冷する。
③電子天秤で質量を測定する。(これがaになります。)
〈本番の操作〉
④網目2㎜のふるいで、試料中の粗大物を除外する。
⑤1000mLのメスシリンダーで、測定したい体積の分だけ試料をとる。(これが、試料量になります。)
⑥ろ過器にガラス繊維ろ紙をセットして、試料を少しずついれて、吸引ろ過する。
⑦ろ過器の壁に、純水をつたわらせて、浮遊物質をガラス繊維ろ紙状に洗い出す。
⑧できるだけ、水分を吸引する
⑨吸引後のガラス繊維ろ紙を105〜110℃の乾燥器中で2時間乾燥させる。
⑩デシケーター中で放冷する。
⑪質量を電子天秤で測定する。(これがbになります。)
〈算出!〉
⑫以下の計算式に、測定値を代入して、SSを求める。
評価方法
次の目安を基準に数値を評価しましょう。
参考文献→環境省 別表2 生活環境の保全に関する環境基準
→ 河川の基準値
→ 湖沼の基準値
高校化学でわかるポイント
SS値が大きいとどんな影響がある?
SS値が大きいと、それだけ水中に浮遊物質が多いということを表しています。(そのまま・・・)
ということは。水が濁ったり、透明度が低くなったり影響があるはずですよね。
では、水が濁ると何がよくないのか・・・。
私たち人間目線で考えると見栄えが悪い、汚いという感想が浮かぶと思います。
水中の生物にとっては、濁りすぎると、
エラがふさがり、窒息死してしまう原因や
太陽光線の透過を妨げてしまい、藻類などの光合成を阻害する原因になるそうです。
自然界には、魚類だけがいるわけではありません。
魚類が死にすぎたらどうなるのか。
消費者、生産者など生態系全体での影響を考えながら、人為的汚染が環境に与える影響を考えていきたいです。
まだ、色々思いつくまま書くには頭がたりないので、この辺も自分の考えを記事にまとめてみたいと思います。
参考文献→国土交通省 SS(浮遊物質量)
コロイドとは?長さの単位マイクロメートルの目安
しれっと、コロイド粒子というワードを乗せてしまったので、教科書レベルで解説します。
コロイド粒子は、1nm~1㎛程度の直径の粒子のことを指します。
コロイド粒子が分散している状態のことを、コロイド状態、コロイドと呼びます。
この実験で使用したろ紙の孔径は1㎛なので、コロイド粒子を透過してしまいます。
が、目詰まりによっては、透過しない場合もあるので、絶対に通るとも言い切れないです。
1㎛=ろ紙の孔径、1nm=半透膜の孔径
とイメージしておくと便利だと思います!
もっと身近な太さを見てみると、
髪の毛が一般的に100㎛だそうです。換算すると?
100㎛=0.1mm
ものさしを持ってきて、
1mmの目盛を10等分したうちの一つ分が髪の毛の太さ。
1mmの目盛を1000等分したうちの一つ分がろ紙の孔径。
1mmの目盛を1000000等分したうちの一つ分が半透膜の孔径。
果てしなくめんどくさい例え(笑)
さいごに
SSの大変なところは、器具を用意するところです。
操作も、計算もとても簡単なのでアスピレーターを先生にねだりましょう(笑)
操作や計算が簡単ということは、考察する時間がより多く取れますので、浮遊物質が生態系に与える影響や、発生源などの原因が地域によってどのような違いがあるのかなど深掘りすることも容易だとおもいます。
mamiwaも、藻類が光合成できなくなると?腐敗が進むと?悪影響について、想像でなく根拠がほしいなと記事かきながら思ったので、調べたり予想立てたりしてみたいと思います!
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